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豆腐の化学

 豆腐って何故固まるか知っていますか?大豆の絞り汁にニガリを入れると固まるのです。ではなぜ固まるのでしょうか?絞り汁にはいろいろなタンパク質が含まれています。タンパク質というのは、いくつものアミノ酸がアミド結合(ペプチド結合)で鎖のように繋がったものであるのですが、ただのヒモのようになっているわけではなく、アミノ酸同士で共有結合、イオン結合、疎水結合、水素結合をして絡まった糸のようになっています。ここに電解質、強烈な撹拌、熱など外から熱を加えてやると結合が切れ違う結合ができたりして形が変化します。これがタンパク質の凝固です。卵の白身を熱すると固くなるのも、白身がタンパク質の塊であるためです。牛乳に炭酸水をいれると固まるのも炭酸イオンの電気的力によって結合が変化して固まります。牛乳を遠心分離するとクリームや、さらにバターなどができるのも、牛乳のタンパク質が遠心力などの力によって結合が変えられてしまうためです。もっと身近な元で言うと、お風呂に入って髪の毛を洗ったときにしっとりとしているのは、髪の毛が水を吸って結合が変わってしまうためです。しかし、これら変化はあまり強烈な力でないときは、不可逆的に戻る事ができます。髪の毛を濡らした時はしっとりとストレートになっていても、乾くとくせっ毛になってしまうのはそのためです。ちなみに、牛乳が白く濁っているのはタンパク質によるものです。
 さて、少し脱線してしまいましたが、豆腐もやはりニガリという物を入れると固まります。ニガリの主成分は塩化マグネシウムという塩です。塩素イオンとマグネシウムイオンに解離するので、電気的力によって結合が変化し固まってしまいます。これを利用しているわけです。

 最近の豆腐は何故安価なのでしょうか?これが不思議に思った所です。豆腐は大豆を絞ってさらにニガリで固める。そして、カスとしてオカラというものができます。最近の豆腐工場にはオカラもなければ、原料の割に多くの豆腐が作られています。これが安価な理由なのです。ニガリは戦争中に軍需物質として使われ不足していたため、スマシ粉と呼ばれる硫酸カルシウムを使う事にしました。いわゆる石膏の原料でして・・・。塩化マグネシウムは塩素イオンがマイナス1価にチャージしており、マグネシウムイオンはプラス2価にチャージしています。しかし、硫酸カルシウムは硫酸イオンがマイナス2価、カルシウムイオンは2価にチャージしています。この電荷が1つ違うということがとても大きな事なのです。詳しい話は分析化学や沈殿の化学で勉強するのでかなり難しいのですが、1価と2価では単純に2倍した以上の沈殿効果を発揮します。そのため、汚水の多い浄水場ではアルミニウムイオンの塩を使う事が多いです(アルミニウムは3価)。これにより沈殿スピードがあがり、さらに沈殿しきれないタンパク質の量を減らします。
 それに加え、塩化マグネシウムより、硫酸カルシウムの方が分子量が大きいのも秘密の一つです。タンパク質は凝固の原因となった物質を取り込みながら凝固する場合と、取り込まずに凝固する場合がありますが、豆腐の場合は取り込みながら凝固します。つまり、塩化マグネシウムの重さも出来た豆腐に加わるということです。重さがあるということは、単純に考えて沢山取れるということでもあります。塩化マグネシウムの分子量は95、硫酸カルシウムは136です。分子量とは「物質量=質量÷分子量」と計算できるので、単純に100gの大豆の絞り汁に1mol(molとは物質量の単位で、その物質の分子が1molならば、6.02×100000000000000000000000個あると言うこと。簡単に言うと1ダースといったら12個あるのと一緒)の塩が凝固で取り込まれたと考えると、1=g÷分子量ですから、塩化マグネシウムは95g、硫酸カルシウムは136gとなります。これだけで1.5倍近くになりますよね?さらに水和といって水を一緒に取り込んだり、先ほどの電荷の関係から、大体4倍程度ニガリより多く硫酸カルシウムで豆腐を作ることができます。さらに凝固スピードもニガリよりも速いので、早く沢山作ることが可能です。これにより水っぽく柔らかい豆腐が安価で大量に出来るわけです。硫酸カルシウムよりも大量に作ることができるものとしてグルコノデルタラクトン、 グルコン酸ナトリウムなどがあります。グルコノデルタラクトンにいたっては、ニガリの7倍近く作ることが可能です。これらの塩を組み合わせたりして作っています。最近の豆腐が安価で、すぐ作れて、水っぽくて、全然歯ごたえがないのはこのためです。