ケシの話。

注意:正当な医療、研究目的以外でのケシ、阿片、その他麻薬成分などを所持、販売、使用、栽培などは法律で禁止されています。麻薬の罰則は通常の犯罪と違いとても重いです。初犯であっても一発で実刑という例はいくつもありますのでくれぐれも手を出さないでください。

 ん〜っと今回はちょっとケシを攻めてみたいと思います。「ケシって・・・あれっすか?麻薬の・・・」そうその通り!!ちょい興味ない?どうよ?!ねねね!!興味あるっしょ!?んじゃケシの話をしま〜っす。
 まずは・・・・ケシってどんなんですか?って話から。ケシには阿片法により植えてはいけないケシ、植えていいケシの2種類があります。まずは、植えてはいけない種類から。

植えてはいけないケシ
@ケシ Papaver somniferum L.
ソムニフェルム種というタイプ。とっても花の色が綺麗である。小アジア原産の一年草で100〜150cmの高さになります。次に説明するsetigerm種より大型ですので、こちらの方が阿片が沢山取れるため、こちらが栽培されることが多いです。
Aアツミゲシ Papaver setigerm
セティゲルム種というタイプ。これも結構綺麗な花が咲きます。北アフリカ原産の一年草で、渥美半島に聞かして大繁殖していた事からアツミゲシの別名があります。ソムニフェルム種と似ていますが小さいです。30〜80cmの高さになります。繁殖力が強いのでたまに野生化していて、日本では発見次第国の人たちが来て火炎放射器で灰にします。

以上植えてはいけないケシの特徴をあげると・・・1.白っぽい緑色。2.無毛または殆ど無毛。3.葉は葉柄がなく茎を抱き込むようにぐるりと葉がついている。の三つです。どこかに植わってませんか?!それは法律で規制されていますよ。チクりましょう(笑)

植えてもいいケシ
@ヒナゲシ
虞美人草、ポピーってやつで一年草。中国史の項羽と劉邦でも出てきますね。項羽の奥さんはこの花くらい綺麗だったそうな・・・。
Aオニゲシ
観賞用で栽培される多年草です。
Bハカマオニゲシ
オニゲシによくにたケシで多年草です。ケシと似た成分を含みますので麻薬原料植物とされています。

植えてもいいケシの特徴は・・・1.緑色をしている。2.全体に粗毛が生えている。3.葉は茎を抱いていない。です。

 以上ケシの形状等々でした。麻薬捜査官はこれくらい解らないと話にならないそうです。知り合いにいたら聞いてみましょう(笑)。

 現在は末期癌患者の痛み止めとしてケシから取れる阿片は使用されています。産地はインド、トルコ、イラン、中国、岡山、茨城などです。日本では現在少量しか栽培されず、その目的はケシを育てるという技術を絶やさないため、今後末期癌患者での使用が増えると予想され、先進国ではすでに消費が多く、日本もこれから多く使用するという考えのため輸入せずに自国で栽培できないか?といった試験的栽培も行っています(うちの大学も試験的に栽培しております)。4月の後半から五月にかけて綺麗な花が咲くので、東京都薬用植物園か帝京大学薬学部薬用植物園などで見てみるといいかもしれません。だけど、管理は厳重にされていますので、触ったりすることはできないので・・・(警備用カメラ、警報装置等々ついて、入れないように鋼鉄の中で育てられています。うちの大学もSOKか何かがやってたなぁ・・・)

 で・・・もちっと掘り下げていきますか・・・

阿片とは?
ケシの乳液を乾燥した物です。阿片の採取の仕方はまずケシ坊主(未熟生の果実)を切傷刀で縦方向に傷を付けます。竹べらでかきとって、タケノコの皮にすりつけます。こすりつけた阿片はすぐに空気中の酸素により酸化され黒くなります。これは服などに付くと落ちなくなりますので注意。そして、タケノコの皮をはがします。はがした皮を乳鉢ですりつぶし、繰り返して細末にし(乳白色になる)完成。大体1本で5gくらい取れるそうです。味はとても苦いです。臭いは草特有の臭いといいましょうか・・・・笑。中に入っているモルヒネの含有率にもよりますが、20mg注射で気持ちよくなるそうで5gと言ったら250回分取れますね・・・汗。末端価格は20mgで2〜5万円だそうな。竹べらでかきとるという地道な作業のため、ヒトの手でないと出来ないために人件費の少ないインドが一番の栽培国です。また品質もかなりよいそうです(生薬というのは育った土地の環境などに成分が大きく左右される。もう一つインドで有名な大麻もインドでは純度が高いですが、日本で作った大麻はそんなにいい品質ではないそうです)。

で・・・何に使うんですか?
阿片の成分はモルヒネ(鎮痛)、コデイン(鎮咳)、パパベリン(鎮痙)、ノスカピン(鎮咳)、テバイン(鎮痛)とその他の20種類くらいのアルカロイドで、末期癌患者への最終的な治療(これをターミナルケアといいます)に使います。ターミナルケアとは、残りの人生を悔いなく過ごしてもらう治療で、結局の所治療ではありませんが、苦しみぬいて死ぬという最期ではなく、家族と共に過ごしたり、やりたい事をして幸せに人生の幕を下ろすという事です。基本的に麻薬ですので、通常の鎮痛には用いません。最初は癌患者に使ったら麻薬中毒者になってしまうのでは?という声もありましたが、現在ではきちんと用法を守って、さらに理由はよく解っていませんが、末期癌患者にはかなりの量のモルヒネなどを投与しても麻薬中毒にはならないらしいです。これは自分の独断的な考えですが、脳内麻薬も負荷が掛かったときに分泌します(ランナーズハイや、骨折時、また精神的に落ち込んでいる時や、なんと普通の怪我の時まで!!)この脳内麻薬があるからこそ、人間は普通に生きていける、これがなかったらただ怪我しただけでも人間はこの強烈な痛みのために死んでしまうだろう。と言った研究者がいます。脳内麻薬は痛みを麻薬様作用で軽減しているようです。これと同じく末期癌患者は形容しがたい強烈な痛みに襲われます(食道癌、肺癌などは特に痛いそうです)。これは脳内麻薬では軽減できる範囲を超えているため、モルヒネの強力な鎮痛効果を利用したのだと思います。この場合は末期癌の疼痛という痛みがあるため麻薬中毒にはならないのだと思います。脳内麻薬で中毒になる人間はいませんよね?ですから、たいしたことのない痛みの時などに麻薬を使うと中毒になってしまうのではないかと思います。ただ、阿片は強烈な止瀉効果(便秘する)があるので、下剤などで便秘を抑える必要があるのと、これまた強烈に苦いので、シロップや酒剤、ワインと一緒に飲んだりします。紀元前1500年頃エジプトの薬物書には「子供の泣きすぎを防ぐ薬」とされ使用されていたとか・・・・エジプト人は子供の頃泣きすぎていた人は麻薬中毒患者だったのだろうか?ん〜昔のヒトは結構怖い事する・・・笑。そしてアヘン戦争で使用されたりもした。中国人は戦争の事となると日本の事をいろいろ言うが、イギリス人のした事はもっと計り知れない悪いことだと思う。まぁ・・・日本人も悪いことしまくりましたが・・・。

モルヒネの使われ方
んで、主成分であるモルヒネの使い方についてです。阿片中に7〜19%含まれているそうです。麻薬です。主な用途はコデインの原料(90%以上がコデインの原料)ですが、モルヒネを中和して塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、エチル化した後に中和して塩酸エチルモルヒネなども使われます。塩酸モルヒネは癌の疼痛治療やその他の激しい痛み、激しい下痢改善などに用いられますが、注射で投与しますが、投与後強力な鎮痛作用はありますが、薬の効果が持続する時間は短いため、注射を何回もしなければならないため、入院している患者、強力な痛みを受けている患者に投与します。硫酸モルヒネは平成元年に発売され、徐放錠として使われています。徐放とは投与後血中濃度を長時間安定維持させるため何度も投与せずに済むので自宅で家族と共にターミナルケアする事ができますので、病院で家族と会えずに寂しく人生を閉じる事もなく、家族と幸せに人生を閉じることができます。MSコンチンという商品名で売られています(もちろん処方がないと買えないです・・・笑)。ちなみにモルヒネをジアセチル化するとジアセチルモルヒネという強力な麻薬が出来ますがこれは現在国際的に輸出入禁止及び製造、所持、授与、売買禁止です。特殊な研究のみに使用が許可されていますが輸出入は例外なく禁止です。このジアセチルモルヒネはいわゆるヘロインというものです。エチルモルヒネは麻薬に指定されています。点眼により眼局所の血管を拡張させ血行を促進するため点眼剤としてごく微量ですが用いられている薬もあります。
また、モルヒネの構造はかなり特殊な構造をしているため、生薬学ではモルヒネ、コデイン、パパベリン、ノスカピンは同じ種類に属しますが、有機化学ではモルヒネ、コデインは同じ構造ですが、パパベリン、ノスカピンは違う構造として分類しています。モルヒネの構造をアップしておきますので、興味のあるヒトは見てください。
モルヒネ1(平面)モルヒネ2(立体)
注意:酸素原子→
、窒素原子→、水素原子→、炭素原子→水色

コデインの使われ方
これも麻薬です。鎮痛作用がモルヒネと比べると弱いです。ですが、鎮咳作用は強力で鎮咳剤として中和してリン酸コデイン、還元と中和でリン酸ジヒドロコデインとして薄めて使用しています。ケシの用途としてはこれが一番多いです。モルヒネもメチルエーテル化してコデインに合成し、さらに還元、中和して使います。これを100倍以上薄めた物は家庭麻薬として麻薬から除外されるため多くのOTC(大衆薬)に配合されています(風邪薬、咳止めシロップなど)。止瀉作用もモルヒネより弱いのでOTC程度の使用量であれば便秘の心配もありません。ジヒドロコデインはコデインの2倍の鎮咳作用があると言われています。このジヒドロコデインは還元して作るため天然の阿片には存在しない物質です。

テバインの使われ方
これはモルヒネと似た構造をもつ麻薬ですが、副作用の痙攣作用が強いので臨床には用いられません。塩酸オキシコドンの原料となりますが、塩酸オキシコドン自体は日本での使用量は少ないです。効果はモルヒネとコデインの中間くらいの鎮痛、鎮咳作用ですが、嘔吐などの副作用は少ないです。

パパベリンの使われ方
中和して塩酸パパベリンとして使用します。麻薬ではありません。胃けいれん糖の症状緩和、血管拡張などの目的で使用されます。

ノスカピンの使われ方
中和して塩酸ノスカピンとして使用します。鎮咳剤で比較的速効で発言します。これも麻薬ではありません。

これからの阿片は・・・
阿片を採取するのは大変な労力が必要といいましたね?阿片を取らなくても、ケシの全草か、成熟したケシの果実から抽出して得ることも出来ます。このように取り出した物質をケシがら濃縮物(CPS)と言います。主にオーストラリアなどが生産していますが、まだまだ不純物の取り除きに大きなコストがかかったり、取り除くのが難しい物質があるようで、完全とはいかないようです。