増殖に二分裂方式をとらない

 さっきウイルスは小さすぎてリボソームすら持っていないと書いたが、ではウイルスはどうやって増殖するのだろうか?普通の細胞は細胞内の核の中にある遺伝子をビデオをダビングするように転写し細胞器官(オルガネラ)が仕事をして細胞分裂しどんどん増えている。しかし、ウイルスはこのオルガネラがない・・・・というより、ウイルスは細胞というものを持っていないのであある。細胞は普通細胞膜という主にリン脂質でできた二重膜に覆われており、この二重膜は膜の役割をはたすが、細胞に必要なホルモンや栄養を通過させ、細胞内の不要物質を排出することができる膜なのであるが、ウイルスは基本的に核酸、カプシドの2つしかなく、核酸は遺伝子、カプシドは堅いタンパク質からできており、核酸を守ったりするために使われるので、カプシドは栄養やホルモンを通過させる事は出来ない。
 では、ウイルスはオルガネラもなくてどのようにして増殖しているのであろうか?答えは簡単で、他の生物のオルガネラを拝借してしまうのだ(拝借される側をホストと呼ぶ)。その一連の流れを書いていくと
1.ウイルスのホスト細胞への接近
 ウイルスがホストに接近するとウイルスは細胞に入りやすいように栄養やホルモンのように振る舞いホスト細胞をだましてホスト細胞は栄養やホルモンと勘違いし、細胞内に取り込んでしまう。
2.カプシドの分解
 細胞内に入るとウイルスのカプシドが分解する。つまり、ウイルスの遺伝子を細胞の中にばらまくのだ。このときにもう細胞はウイルスの遺伝子の奴隷となってしまう。
3.ウイルス遺伝子の複製
 ウイルスの遺伝子が大量に複製される。このとき、複製を早くするため酵素を持ち込むウイルス(天然痘ウイルス)や細胞にある酵素を使うもの(SV40など癌を引き起こすウイルスが多い)がいる。
4.ウイルスの複製または細胞の癌化
 ホストに進入してしばらくは遺伝子の複製に専念しているが、遺伝子がかなりの量になると遺伝子の複製からタンパク質の複製に切り替える。ホスト細胞のリボソームを利用してウイルスのタンパク質が作られる。このタンパク質と遺伝子からウイルスの子孫が作られる。
 一方細胞を癌化させるウイルスは自分の持っている遺伝子を細胞の染色体に入れる。入れた遺伝子はしばらく眠っているが、なにかをきっかけに目覚め細胞の成長と増殖をコントロールする。こうして死なない細胞となり、無限に増殖し始める。つまり細胞が癌になるのだ。
5.増殖したウイルスが出ていく
 増殖したウイルスはホスト細胞の膜を破って外に出る。そして新しいホスト細胞を探し次々に感染しこの1〜5の過程を繰り返す。

 このような経路で増殖するのだが、普通の生物と違う所はウイルスは各成分、構成成分が別々に生合成された後組み立てられてウイルスが完成しているのだ。つまり、部品部品で作られ、その後にくっつけられ一気に外へ出ていくのだ。流れ作業的に増殖しているのである。これは他の生物は細胞分裂によって増えている・・・つまり一つの細胞から一つの細胞ができ、た分裂し・・・と一つずつ作っているためウイルスは普通の生物とは異なるのだ。