ウイルスの増殖を薬で阻止するのが抗ウイルス薬である。しかし、ウイルスはcapsidと核酸だけという非常にシンプルな構造のため特徴がないから、ウイルスを薬でやっつけるのは非常に難しいのだ。
例えば、抗生物質で有名なペニシリンはなぜ効くか?というとprokaryote(原核生物。バクテリアなど)や植物にはcell
wall(細胞壁)があるが、これがないと細胞が死んでしまう。このcell
wallは複合多糖と短いペプチドが結合したもので、ペプチドグリカンといいます。ペニシリンはこのペプチド結合を作る酵素にくっついてしまい、合成を妨げる効果があり、これによりprokaryoteは死んでしまうのです。ヒトはeukaryoteつまり真核生物なのでcell
wallはもっていないので、ペニシリンによって細胞が死んでしまうという事はないので(アレルギーによるショックはヒトによってあります)ヒトに無害で細菌だけを倒す事ができるのです。このように倒したい対象だけに毒性があるものを選択毒性が高いといいます。
普通は以上のように相手の特徴を攻撃するのですが(ペニシリンの場合はcell
wall)ウイルスは核酸とcapsidだけなので、これらを阻止してしまうとヒトの方にも害がでてしまいます。なので、抗ウイルス薬は選択毒性が低く、ヒトにも毒なのです。では、どんな薬があるのかウイルスの増殖過程と抗ウイルス薬の標的を照らし合わせながら見てみましょう。
ウイルスの細胞表面への接近と吸着:抗ウイルス薬の目標は遊離ウイルスの中和または、レセプター(受容体)との結合阻害。つまり、細胞に接近してるウイルスや細胞のレセプターとくっついて中に入ろうとしてるウイルスを邪魔します。(このような薬は中和抗体、可溶性レセプターなどがあります)
細胞内への侵入、脱殻:侵入・脱殻阻害。つまり細胞内への侵入を邪魔したり、殻を脱いで核酸を注入するのを邪魔します。(このような薬はアマンタジン、リマンタジン、T22、T134、AMD3100などがあります)
核酸合成:核酸の合成を妨げるもの、逆転写酵素阻害(レトロウイルスがもつ逆転写酵素、RNAからDNAを合成する酵素を邪魔する。AZT、ddl、ddC、d4T、3TC、ネビラピン、デラビルジンなど)、ウイルスDNA合成阻害(アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビンなど)、ウイルスRNA合成阻害(リバビリン)
転写・スプライシング・タンパク合成:転写調節の阻害(Tat阻害剤、アンチセスオリゴヌクレオチド)
ウイルスタンパク質のプロセッシング:前駆体タンパク質切断の阻害(インジナビル、サキナビル、ネルフェナビル、リトナビルなど)
ウイルス粒子の組み立て:パッケージングかコア形成の阻害
ウイルス粒子の放出:出芽過程の阻害(インターフェロン?)
このような薬がありますが、ウイルスの細胞内への侵入のしくみ、核酸合成の時に働く酵素はウイルスごとに違うため阻害物質の効果もウイルスごとに違ってきます。