まずは、エイズ(AIDS、Acqired Immunodeficiency
Syndrome:後天性免疫不全症候群)の簡単な説明をすると、身体を外的の攻撃から守ってくれている免疫を破壊するので、発症すると通常では感染しないような弱い感染症や、さまざまな感染症が患者を次々の襲ってくる病気。この病気はHIVというレトロウイルスによって起こります。また、このウイルスの大きな特徴として、HIVのもつ逆転写酵素でDNAに変換する時の読みとりミスは、ホストのDNAポリメラーゼにくらべるとかなり高いという点である。
このHIVウイルスに対抗するために、いろいろな抗HIV薬が開発されてきた。その中で前にあげたような逆転写酵素阻害剤として、AZT(アジドチミジン)、ddl(ダイデオキシイノシン)、ddC(ダイデオキシシトシン)が認証さて臨床の現場で用いられてきた。このなかで、最も効果が高いのはAZTでエイズ患者に用いる薬の最初の選択になってきた。が、最も有効な抗HIV薬もHIVを完全に殺してしまうほど強力ではないため、死ななかったウイルスが治療期間中に耐性ウイルスとなって出現し、エイズの治療は困難を極めている。
なぜ耐性ウイルスが治療期間中という早期に耐性ウイルスが出現してしまうのか?というのはこのウイルスの特徴の「読みとりミスがよく起きる」=「核酸の情報が変わってしまう」ということで、抗HIV薬に対する耐性の遺伝子が組み込まれてしまうことになるのだ。
この耐性ウイルスが早くできてしまうと言うことなどが、エイズウイルスが治療困難な病気の理由の一つだ。
しかし、近年になっていくつものよい成果が報告されている。その代表的なもを2つあげると、 一つ目はHIVに感染したあと、5〜10年という長い潜伏期間を経過したあと、エイズが発症するという特徴からHIVは感染した後、数年間ヒトの体内で静かに過ごしていると考えられてきた(ヘルペスウイルスなどは、ほとんどのヒトが感染しており、体調の悪いときに口内炎に似たものができ、熱がでるといった症状や、帯状疱疹となって発症する。ヒトの体力が落ちた時だけ増殖してその本性を現すのだ。)これが常識と思われていた。だが、HIVウイルスは患者の体内で毎日数十億におよぶHIVが生産されては血中から取り除かれているということが判明した。だから、感染者はエイズが発症する直前や発症してから抗ウイルス剤を処方していたが、その治療では遅いという事が理解され、早期治療がされてきている。
二つ目は複数の抗ウイルス薬を処方するということで、HIVを殺せるということである。AZT、3TC(チアサイチジン)、プロテアーゼ阻害剤の三種類の薬剤の混合を生まれつきHIVに感染している新生児に処方すると、一年以上経過しても赤ん坊は順調に育っているという報告だ。この赤ん坊の血液を検査してみると、一年前までは大量に見つかったHIVウイルスが全く検出されなかったのである(確実にHIVウイルスが赤ん坊から消え去ったとは言えないが・・・)。
この多剤併用療法によりHIVウイルスを感染者の体内から完全に消滅できるかどうかは別として、HIVウイルスを殺す薬剤が初めて見つかった事は確かである。また、この療法の普及に伴い、エイズ患者の死亡率が前年度比の40%も減少したと報告がある。
ワクチンについてはどうだろうか?ウイルス感染症といえば、ワクチンが最も有効な武器である。例えば、狂犬病ウイルスや天然痘など今ではほとんど見られなくなった病気もワクチンの発達によるものだ。
ワクチンの作用を簡単に説明すると、ターゲットのウイルスに似たものや、ターゲットのウイルスを殺したもの、弱毒化したターゲットのウイルス、またはそのウイルスのDNA、などをヒトの免疫に覚えさせてウイルス疾患を防ぐというものだ。
しかし、HIVウイルスはRNAを持っているウイルスなので、変異性が安易に起こってしまう。例えば、毎年冬になると流行するRNAウイルスであるインフルエンザウイルスを見れば解ると思いますが、前年度のワクチンは効き目が薄いという事がよく言われていますよね?RNAウイルスはeukaryoteに比べて約100万の変異率があります。言い換えれば、eukaryoteの遺伝子一つが変わる時間で、RNAウイルスは100万の遺伝子が変わってしまうほど早いのです。遺伝子が変わると言うことは、性質が変わってしまうと言うことになります。つまり、ワクチンの効果が薄れるのです。
特にレトロウイルスはその傾向が強く、HIVウイルスなどすべての子孫ウイルスが異なり(クアジス
ピシース)ワクチンを作るのがとても困難です。例えば、アメリカでワクチンが完成したとしても、アフリカなどではかなり違うため、ほとんど効果は期待できません。他にも様々な理由があって、ワクチンの開発は遅れていますが、これが大きな理由でしょう。
現在抗エイズ薬に比べてワクチンは開発が遅れています。薬の方はかなりの効果があげられています。「薬があるのだからワクチンなんていらないのでは?」とありますが、抗エイズ薬はとても高価で、アフリカなどエイズ患者が多くいる地域ではとても対処できません。そこで安価なワクチンが求められているのです。今も研究が進められています。近い将来ワクチンが開発されるのではないでしょうか?